もちつきにっき

名刺に書いてる以外のこと。

一般常識1

日常の一瞬は久遠。

本番に弱い娘の最後の試合を、固唾を呑んで見守った母。

年に一度の桟敷席から伸びる手、手、手。

「人格の陶冶に努めます」と生徒代表で読み上げる18歳の父。

今思えば慚愧に堪えない言葉を精一杯に伝えた3月27日。

青春の蹉跌と言われればそれまでの日々。

 

故郷の町で邂逅。

逼迫した財政に難しい顔を突き合わせる政治家たちを映すテレビは遠くに。

ラーメンをすする音にかき消される。

「それがこの会社の定款だ。つまり憲法だって言ってね。」

具合悪くなっちゃって辞めちゃったと話す彼女の顔は確かに青白い。

「今ここで会ったら疾病利得とか言われそう、嫌だな」

陋習の残滓は簡単に消えない田舎。

私が帰ってきた理由は。

 

ーーーーーーーー

公開するの恥ずかしい。てかもううける。
難しい言葉使いたがりの中学生でしかないなこりゃ…

一般常識[漢字・語句編]を覚えるために書いてみたけど

普段はあてずっぽうとノリで言葉を使っているので

こんな難しい語句を使うとちぐはぐハンバーグ。

もしこの記事を読んだ方がいらっしゃいましたら

お願いですから笑ってください。

本は好きだけど、意味の分からない言葉とか

読み方の分からない言葉はよっぽど本筋に関係ない限り

自己解釈するか無視しちゃうもんな、反省です。

でも難しい言葉使えたり、一般常識あったり、

時事問題にすらすらと答えられれば何を得られるのか

そして失うのかについて

興味があるのでちょっと頑張って取り組もうと思います。

ボタン、漬物、控え室

最近、予想通りのことしか起こらない。

 

控え室ではみんな緊張した面持ちで分厚い対策本やら自分のノートやらを見ている。

私は冷めた目つきでそれらを眺め、少しきついパンツのボタンを右手で触る。

やっぱ太ったんだな私。春の健康診断で突きつけられた穏やかな右上がりのグラフが頭に浮かぶ。

社員らしき男が部屋のドアを開け誰かの名前を呼んだ。

…みかんが食べたくなる名前だ。

「はいっ」

みかんちゃんは笑顔で快活な返事をして

てきぱきと自分の荷物をまとめ、男のもとにかけより礼をした。

「よろしくお願いいたします」

控え室から面接ははじまってますよ、ですかい。

自分の原型に合うものを探したいのに

用意された型にうまく収まる方法ばかり流通している。

原型がわからないから既成の型に守られていたほうが安心するのか。

ケッと横を向き、左手でお腹をさする。

やる気がないわけではないが、

型に必死におさまろうとする周囲の雰囲気には辟易していた。

大量生産おにぎり的服装に身を包む私だって

結局大差ないことには気づかないふりをする。

顔を向けた先には重厚な作りの本が詰まっている本棚があった。

六法全書、か。

あ、そういえば返事してないな。

ポケット六法を小脇に抱えて派手なショートパンツを穿いた男の姿が

頭のスクリーン上に登場した。

「ほんとに好きだよ」と書かれたふきだしを左側に表示したトーク画面を

1週間ほど放置している。

世の中に存在する大体の物はいつかゴミになる。

人間も、気持ちも、関係も期限がある。

いつその時が来るかが問題なだけだ。

歯の浮くような文言が浮遊するのを見て、

予想通りのタイミングで終わったなと思った。

ケーキは賞味期限を過ぎた12時に突然紫色になるわけではないが

人間に関することは突然変化する。

あーあ。まぁでも楽しかったな。

熱しやすく冷めやすい私の気持ちの折れ線グラフは

「法学部のチャラい後輩について」という題名で

頂点が20度の角を描いてゼロに着地した。

しかしなかなかにY軸の最高値は悪くなかった。

同時期にはまった白菜の漬物は少なくとも上回っていた。

私は一度気に入ると病的なくらいのめり込んでしまう。

スーパーで安く売られていた白菜の浅漬けを

久しぶりに買って食べてみたら驚くほどおいしかった。

それから1日に1パック消費するようになった。

塩分量のことを考えれば相当不健康なことはわかっていたけど

やめられなかった。

体のなかに塩分が蓄積されて顔も体もぶくぶくむくんで

破裂してしまう姿を想像したけど、

どうせすぐ折れる線だとわかっていた。

実際、そんなことになる前に飽きてしまった。

あれも鋭角20度くらいのグラフだったな。

 

みかんちゃんが少しリラックスした表情で男と帰ってきた。

「では次は」

私の名前が呼ばれた。

「はい」と少し口角をあげて席を立つ。

私はこの面接に受かるだろう。

予想通りの日々を、あきらめたような顔で過ごしながら

どうしても期待してしまう私に

救いの手を差し伸べる誰かを、

もしくは

完膚なきまでにつぶしてくれる誰かを。

他力本願にずっと待っている私は、

笑顔で男に言った。

「よろしくお願いいたします」

ーーーーーーーーーー

 

三題噺その2。漬物の突然感が隠せない。ぬぅ。

フライパン、自然、麦茶

麦茶を一口飲んで、帰ってきたと実感がわいた。
「もーやってらんないよ~7月でこんなに暑いなら11月はもっと暑くなりますな~」
母、葉子がくだらない冗談を空に投げながらキッチンに立つ。私も腕まくりをしてリビングのイスを立った。
「いいのいいのさっちゃんは座ってて」
「え、いいの?なんかやるよ」
「久しぶりに帰ってきたんだからゆっくりしててよーお母さんお昼は腕振るうから!」
「え、冷やし中華って言ってなかったっけ?」
冷やし中華だよ」

ヨーコは適当だなーとつぶやいて座る。母一人子一人のうちではいつからかお母さんとはあまり呼ばなくなった。友達みたいでいいねと以前言われたこともあるけど、葉子のマイペースにときどきいらっとして喧嘩になることもある。でも今日は葉子も少し気遣ってくれるようだった。実際私はもう何をする気力もなかった。
大学に休学届を出してきたのは昨日。
なぜかいつも横柄な態度の学務のなかでも最もいけすかない男が対応者だった。
「無理ですよ。後期から休むとなると前期から続いてる実習の単位が出ませんよ。」
「それでいいです」
男は薄笑いを浮かべてごみを見るような目になった。いや、実際ごみを見るときの人間は無表情だ。あれは相手が意思のある人間だからこそ作った表情だ。

文字通り逃げるように実家に帰ってきたのが昨夜。すべてのことから逃げてきた。連絡もなしにドアの前に立つ私を見て葉子は驚いた。休学のことを話したらもっと驚いた。しかし「あんたもまた大胆な子ねぇ。さすが私の子だわ」とだけ言って理由もあまり聞かなかった。

ジューといい匂いがしてキッチンのほうを見る。感覚器官が好物の匂いに騒ぐ。
「え、なんで卵焼き?冷やし中華でしょ?」
「さっちゃん好きだからさ~卵なんてどんな形でも変わらんよ」
卵焼き器の上には目に鮮やかな黄色が四角く広がる。私は葉子の甘い卵焼きが好きだった。過去形なのは以前の趣味だからだ。今は味覚も大人になって甘すぎるのは体に悪いような気がして敬遠している。
葉子のなかで、私の食べ物に関する情報は家を出ていった三年前からアップデートされていない。ろくに連絡もせず、帰省もしなかった三年間の自分を自覚した。悪かったな、たった一人の娘なのに。
ぼーっと手際のいい母の手元を見つめる。
「卵焼き器って汎用性低いよね」
「ハン…なに?」
「卵焼き器って卵焼き作るときしか使えなくて不便じゃん。フライパンのほうが優秀だわ」
「そうかなぁ」
「そうだよ」
「でも私は卵焼き器の『卵焼き一筋!これしかできません!』っていう不器用さ好きだよ、さっちゃんみたいで」
「え、なんじゃそりゃ、うれしくないから」
思わず早口で返すが、葉子は鼻唄を歌い気にも留めてないようだ。私は似ていると言われる卵焼き器を見つめた。

「あらよっとっとっ」
葉子が色とりどりの皿をテーブルの上に置く。麺の上に乗るキュウリ、ハム、トマト……卵焼き。
「やっぱりおかしいよこれ存在感が」
「いいから食べな!のびのびになっちゃうよ!」
麺の上に君臨して邪魔なので一番に卵焼きを食べた。

おいしい。
甘すぎる、もはやこれはお菓子だ。でもおいしい。ずっと、18まで食べてきた味だ。この三年間で私はずいぶん大人になったと思ったのに、葉子のなかではこれを頬張っている私で思い出が止まっている。そのことに、ひどく安心する。
「ほら~さっちゃん好きでしょ。私のもあげようか、四個になるよ!」
にこにこと母が笑う。
「ありがとう……お母さん」
自然と、口から出た。



――――――――

三題噺の練習で書いてみました。
三題噺メーカーなんてあるくらいだから、メジャーなのかな。楽しかったです。

キウイフルーツ味

小雨の夜の町をマックシェイクキウイフルーツ味を飲みながら歩く。私はバニラを買おうと思ったのに。期間限定の魔法にかけられて店を出る私の右手には薄緑色のそれが握られていた。


「少し前の私には、今こうしていることなんて想像できませんでした」
うっすら涙を浮かべながら表彰台に立つ友人を4回くらい手を叩いて祝福した。スーツのズボンがずり落ちそうだ。買った当時、つまり3年前の私より確実に太ったという事実を容赦なく突きつけてくるのでずっと無視していたらヒステリックな女が別れの言葉を口にしてアパートから出ていくように今朝ホックが吹っ飛んでいった。というわけで私はホックのないスーツのズボンに神経の8割を集中させていた。早く帰りたい。


今日で一ヶ月。会って二回目で連絡先交換までこぎつき、それからなんとなく付き合い始めた後輩。「一ヶ月だね」とだけ送ってくるのがかわいい。よかった、かわいいと思えている自分に安心する。紙コップを左手に移動させて返信を打つ。「だねー♥」
この子と付き合うことを、二ヶ月前の私だって全く想像していなかった。そのときはまだ友達の彼氏だった。
店員に勧められたキウイフルーツ味シェイクを一口すする。あ、おいしい。作り物の味がしてなんだか安心感がある。駄菓子に似てるのかな、たまに飲むなら悪くない。
言うなれば今夜キウイフルーツ味のシェイクを飲むことだって想像していなかった。でもそんなこと、特筆すべきことでもない。

喉が乾いたら金を払って何かで潤す。
その何かは想像できないだけで。それだけだ。

飲み続けていたら甘ったるさが胃に重くのしかかってきた。なんでだろう、一口目は結構おいしかったんだけどな。ぼーっとしていたら無性に悲しくなって、飲み終わらないうちに近くにあったゴミ箱に捨てた。

手を伸ばす

手を伸ばせば届くことの悲しさを教えてくれたのは机に積まれた本だった。
お金がなくて隣町まで自転車で行き、古本屋で立ち読みしていた頃を思い出す。図書館から借りた本でも、家に着くまで待ちきれなくて街灯の明かりの下で目を凝らした。

今はある程度お金も入って本くらいなら欲しければいつでも買える。ポチッと買ったものの忙しくて積んだままの本を見たら、あの頃の私はなんて言うだろう。

手を伸ばしても届かないことの喜びを教えてくれたのは久しぶりに会ったあの人だった。
穏やかな表情で大人の返事をする彼を見て、私との間にある距離が見えた。決して私の机の上には積まれないその輝きに支えられた。

きっと手を伸ばすことが好きなのだ。脚立を使ったら届く距離だとしても無意味な背伸びをしていたい。「届かない、届かない」と言って喜んでいる小学生でもしないような茶番なんかとっくに皆卒業して、脚立をよじ登った先にあった幸せと仲良く暮らしてる。

それでも私は止められない。「手を伸ばしても届かないこと」にずっと夢を見ていたいのだ。

好きと言うこと

今住んでいる町が好きだなぁと思う。

おはぎがおいしい和菓子屋さんも

天井からぶら下がる計りに野菜を置く八百屋さんも

細々とずっと続けている模型屋さんも

夕暮れどきに表を掃くスナックのママも

薄れてもうほとんど読めない「ラヂオ店」の看板も

自転車で通り過ぎるだけで満たされる。

 

一度だけ訪れた喫茶店がいつの間にか閉めていた。

「あ」と思った。

あんなに好きだと思ったのに、結局伝えないままだった。

もうきっとマスターと話せることはないだろう。

 

好きだったら伝えなきゃいけなかったなと思う。

数百円あったら何か買える。

サイトの口コミ欄に書き込むだけでも応援できる。

どんなにこの町が好きでも

通り過ぎてばかりいたら、何も伝えられないのだ。

 

それは人でも物でも同じ。

「いつかはなくなってしまう」

それを時々思い出すだけで、やるべきことはたくさん見つかる。

好きなものを好きだと言うことは、

他人を生かすことでもあるし

自分を生かすことでもある。

 

 

 

 

 

 

なんか最近教訓めいた恥ずかしい文章しか書いてないな…
まぁでもすべて本心100%です。しかたない。

覚えておく

数年前まで美術と名のつくものが好きではなかった。どうせ私にはわからないとへそを曲げていた気持ちがあった。
「あなたはどう思いましたか、自由に書きなさい」なんて言いながら答えはある程度決まってた現代文の授業みたいな息苦しさ。でも美術の感想において「答え」を導きだすのは先生の顔色を窺うよりずっと難しくて、いつになってもコツさえわからなかった。

それを変えてくれたのはひょんなことから知り合ったアーティストの友達だった。

その人は私を現代美術館にいくつも連れてってくれたけど、何をどう感じたらいいのか「やっぱわかんねえなぁ」と思うだけだった。

帰り道その人は「覚えておくといいよ」と言った。
「今わからなくても覚えておくといいよ、俺だってわからないものばっかりだ」

それから私は相変わらず「わかんねえ」ままだが、現代美術が好きになった。

覚えておくことの重要性は美術に限ったことではないと思う。
悔しかった。
好きだった。
変えたいって思った。
なんでだろうって思った。
生きるのに必要なことをこなすうちにそういうことはびっくりするくらい忘れる。

だから私は意志をもって覚えておこうと思う。
答えの出ない今日を、まだ見ぬ明日のために。