もちつきにっき

名刺に書いてる以外のこと。

手と線

店員にどなるおじさん、蒸発した母、週刊誌の記者、不倫してるサラリーマン、もうあとがない政治家、コールセンターのギャル。

その昔、何にも属していない小さな手はすべて、誰かと繋がるために結ばれていた。
ある日公園に行ったら地面にたくさんの線が引かれていて、囲まれた枠に自分の名前が書いてあった。
驚いて駆け寄り、地面に手をついた。
手はもう開かれていて、なんでもできることに気づいた。
書く、撫でる、持つ、叩く、絞る、注ぐ、切る。
地面にもっとたくさんの線を引くことだってできた。
時折誰かと手を繋ぐこともあったけど、繋ぎあったって結局ひとりとひとりだと気づいたら悲しくなった。
だんだん、足元を見なくてもどこにどんな線が引かれているかわかるようになった。
同じ枠の中にいた子とたくさん遊んだ。
線をふまないようにすれば怒られなかった。

ふと気がつくと頬に夕日が差していた。
向こうの隅に、平行に並ぶ影を見つけた。
間にあるいくつもの線に目を移した。

「あれ、おんなじだ」

砂まみれの手をはらい、そぅっと差し伸べながら近づいた。


ひとりとひとりである意味がわかった。