もちつきにっき

名刺に書いてる以外のこと。

覚えておく

数年前まで美術と名のつくものが好きではなかった。どうせ私にはわからないとへそを曲げていた気持ちがあった。
「あなたはどう思いましたか、自由に書きなさい」なんて言いながら答えはある程度決まってた現代文の授業みたいな息苦しさ。でも美術の感想において「答え」を導きだすのは先生の顔色を窺うよりずっと難しくて、いつになってもコツさえわからなかった。

それを変えてくれたのはひょんなことから知り合ったアーティストの友達だった。

その人は私を現代美術館にいくつも連れてってくれたけど、何をどう感じたらいいのか「やっぱわかんねえなぁ」と思うだけだった。

帰り道その人は「覚えておくといいよ」と言った。
「今わからなくても覚えておくといいよ、俺だってわからないものばっかりだ」

それから私は相変わらず「わかんねえ」ままだが、現代美術が好きになった。

覚えておくことの重要性は美術に限ったことではないと思う。
悔しかった。
好きだった。
変えたいって思った。
なんでだろうって思った。
生きるのに必要なことをこなすうちにそういうことはびっくりするくらい忘れる。

だから私は意志をもって覚えておこうと思う。
答えの出ない今日を、まだ見ぬ明日のために。