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もちつきにっき

名刺に書いてる以外のこと。

手を伸ばす

手を伸ばせば届くことの悲しさを教えてくれたのは机に積まれた本だった。
お金がなくて隣町まで自転車で行き、古本屋で立ち読みしていた頃を思い出す。図書館から借りた本でも、家に着くまで待ちきれなくて街灯の明かりの下で目を凝らした。

今はある程度お金も入って本くらいなら欲しければいつでも買える。ポチッと買ったものの忙しくて積んだままの本を見たら、あの頃の私はなんて言うだろう。

手を伸ばしても届かないことの喜びを教えてくれたのは久しぶりに会ったあの人だった。
穏やかな表情で大人の返事をする彼を見て、私との間にある距離が見えた。決して私の机の上には積まれないその輝きに支えられた。

きっと手を伸ばすことが好きなのだ。脚立を使ったら届く距離だとしても無意味な背伸びをしていたい。「届かない、届かない」と言って喜んでいる小学生でもしないような茶番なんかとっくに皆卒業して、脚立をよじ登った先にあった幸せと仲良く暮らしてる。

それでも私は止められない。「手を伸ばしても届かないこと」にずっと夢を見ていたいのだ。